土方はこんなに静かな時を過ごせたのは何年ぶりかと思った。 「あのぅ…」 「なんだ?」 声を上げたのは美海だ。 きっといつかは知ることになる。 伝えなきゃならない。 「実は…」 「なんだ?はっきりしろ」 美海の言いたいことがなんとなく分かった沖田は、気まずそうに下を向いている。 「実は…将軍は逃げました…」 土方は目を見開いた。 「そんな冗談いくらなんでも面白くないぞ」 「歳、本当だ」 近藤が力なく言った。【頭皮濕疹】如何治療頭皮濕疹及遺傳性的永久脫髮? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 :: 「嘘だ」 それなら自分は、新撰組は、死んでいった仲間は、林は何のために戦ったというのだ。 「土方さん。正確には、将軍と容保公です」 沖田は土方の目をまっすぐ見る。 「松平さんも…?」 「私達を見切ったんです」 「………そんな馬鹿な」 土方は呆然としている。 主人がいない今、行く宛を失ってしまった。それでも戦争は続く。 会津という飼い主に買われていた新撰組は捨て犬になってしまった。 実は、会津藩主の松平以外にも、桑名藩主も逃げている。 固まる土方を美海、沖田、近藤、松本は見守る。 「そんな……。近藤さん」 「ん?」 近藤は優しく聞き返す。 「あんたはどうしたい?今や俺らは戦う必要は無いんだ。捨てられたんだからな」 土方は呟いた。 「俺は…」 近藤の答えを皆黙って待つ。 新撰組ってここからどうなるんだっけ? 美海は詳しく知らない。 近藤は口を開いた。 「俺は、賊軍と言われようが何と言われようが最後まで戦いたい。将軍様のために、戦いたい」 「俺らを捨てた奴のために?」 「俺は将軍様や松平さんには恩がある。 他が逃げようと裏切ろうと、俺は最後まで、将軍様をお守りしたい。例え、もうお逃げになったとしても」 沖田は微笑んでいた。 近藤らしい答えだ。 「そっか…。わかった」 土方もなんとなくこの答えを予想していたのだろう。 「近藤さんが言うなら、俺らは、新撰組は。最後まで将軍につこう。例え最後の一人になっても、皆が敵になっても、裏切らない」 近藤は頷いた。 土方は沖田と美海も見る。 二人も頷いた。 「よし。こうなりゃとことんやってやろう! 賊軍だぁ?んなもん次で錦旗奪い返してやるよ!」 そう叫ぶと土方は立ち上がった。 何を思ったか、部屋を出ていった。 「沈んだかと思えば元気になって…。忙しい人ですね」 美海は苦笑いした。 「まぁとりあえずよかったです。無事で」 沖田の言葉に皆が頷いた。 「伏見の話聞きたかったなぁ」 松本が言った。 松本は妙に戦国大名のような所がある。 基本、戦いを好んでいる。医者としては珍しい。 「今それを聞くのは傷口に塩をえぐり込むようなもんですよ」 沖田は笑った。 「歳、傷つきやすいところあるからな…。歳が俺の顔に泥を塗ったなんてとんでもねぇ。俺はいつも歳のおかげで『近藤勇』でいられるからな」 美海は近藤の言った意味がなんとなく理解できた。 本当にお互い信頼しあってるんだろうなぁ。 「俺には本気で謝っていたが、奴はまだ負ける気はしてないだろ」 「当たり前ですよ。近藤さんと私が復活して美海さんも増えれば負けるわけがない」 沖田はニッと笑った。 「これは早く復活してもらわなければなりませんね!」 「だな」 「それはそうと…。永倉さん達、元気でしょうか?」 美海は窓を見る。 一先ず負けはしたが、戦争は終わった。 またすぐに始まってしまうのだろうか。 「見に行きます?」 「顔見がてら手当てでもしますか!」 美海は立ち上がった。