激しい白兵戦を繰り広げるも、砦の守備に当たっていた大将・佐久間盛重はあえなく討死した。 同じく前線の鷲津砦も、籠城戦の末、朝比奈泰朝ら今川軍の猛攻を受けて、 織田秀敏、更にはその甥・飯尾定宗などが共に討死し、両砦は陥落したのである。 「信長公記」によれば、信長が熱田神宮に到着した同刻に、神宮の前から東を見ると、 既に陥落した後だったのか、両砦から煙が上がっているのが見えたという。 その後 熱田を後にした信長は、馬上から兵たちに 「これより、佐久間信盛が居陣致せし善照寺砦へ出向く!」 「「ははっ」」 「されどその前に丹下砦へ立ち寄る故、左様心得ておけ」 「殿、…何故 丹下砦へ?」 「今川との大戦に挑もうという時に、こちらは未だ敵方の動向すら僅かにしか存ぜぬ。一先ず今川の情報を仕入れたい。 また丸根・鷲津の両砦の損害、これより参る善照寺砦に集まりし兵の数は如何程になるか…事前に確認したき旨が山程ある」 信長は双眼を糸のように細くして、道の彼方を見つめると 「このまま海岸沿いを駆けてゆけば、あまり時をかけずして丹下へ参れようが、 潮が差し満ちていては馬の足では不便じゃ…。https://ventsmagazine.com/2024/07/26/botox-price-guide-how-much-should-you-pay/ 致し方ない、上手の道から参るぞっ」 素早く手綱を捌き、上手側の道を全速力で駆けて行った。 道を飛ばしに飛ばし、宣言通りまず丹下砦に立ち寄ると 「──丸根、鷲津両砦、敵勢の猛攻を前にあえなく陥落…」 「──今川義元率いる敵勢の本隊は、大高城周辺の制圧が完了したとの報を受けるや否や、沓掛城を出陣なされたとのこと!」 「──密偵の知らせによれば、軍は大高城の方角へ向かって、西へ西へと進んでいる由にございます」 「──お味方による今川方への寝返りや謀反の様子はこれなく、善照寺砦の方へは少なくも二千の兵は集まるかと」 その時点で分かる情報を大雑把に耳に入れると、またすぐに馬に飛び乗り、信長は善照寺砦を目指して駆けて行った。 時折 西から流れて来る、厚い黒雲を気をかけつつ── 一方、清洲城・奥御殿の濃姫は、御座所の御居間にて、老女・千代山と膝を突き合わせていた。 部屋の端には三保野とお菜津も控え、千代山が姫に報事(しらせごと)をしているのを、じっと見守っている。 「…ならば、織田前線の砦はいずれも今川の手に落ちたというのですね?」 「まことに残念なことながら。 ──今川方の先陣を務める、松平元康なる者が率いる軍勢の猛攻に耐え切れなかった由にございます」 「松平元康?」 「元は三河の岡崎城主・松平広忠殿のご嫡男にて、故あって今は今川氏の人質のお身の上にございますが、 その昔、この尾張へも身柄が送られたことがあり、一時 織田家の人質であったことがあると聞き及びまする」