「………それもそうじゃな」 「それに第一にお知らせせねばならぬのは、類様ではなく、殿にございましょう? 姫様との間の御子を何よりも望んでおられたのは、誰あろう殿なのでございますから」 濃姫は三保野の顔を一瞥し、黙したまま頷いた。 三保野は “ほんに仕様のない” といった感じに首を振ると 「では一先ず、医師の診察を受け、その上で殿にご報告することに致しましょう。殿は確証ない報は好まれぬお人故」 その顔に再び笑みを作りながら、穏やかな口調で進言した。 姫も一旦気持ちを落ち着けるように大きく息を吐(つ)くと、ややあってから 「相わかった。 ──事態が事態じゃ故、今日のところは、そなたの言う通りに従うことに致そう」 妥協するように言った。 「今日だけでなく、いつもお従い下されると良いのですが」 「それは出来ぬ。何もかもそなたの言う通りにしていたら、そなたのように詰まらぬおなごになってしまいそうで恐ろしい」 冗談っぽく笑う姫を前に、三保野は思わず面くらったような顔をする。 「つ、詰まらぬとは何でございますか、詰まらぬとは! 私とてこれでも──」 三保野が必死になって反論していると 「失礼致します。白湯をお持ち致しました」 湯呑みの乗った盆を手にしたお菜津が、そろりと室内に入って来た。香港打Botox邊間好?我適合Botox去皺瘦面嗎?一文了解Botox價錢、功效及風險 「ご苦労」と濃姫が労いの声をかけると、お菜津は床の上の主人を見て目を丸くする。 「まぁ!お方様、起きていらしても大丈夫なのですか?」 「ええ、何とか。 …と言うよりも、あまりにも大きな事態に直面した故か、込み上げてきていた物も、すっかり下に降りてしまったようでのう」 「大きな事態、と申されますと?」 お菜津は伺いつつ、姫の傍らに座して、そっと畳の上に湯呑みを置いた。 「まだしかとは分かっていないのです……、それを知る為には一先ず医師の見立て仰がねばならぬでのう」 「医師?」 「悪いがお菜津殿。後で表へ参り、姫様の元へ医師を寄越してもらえるように手配してくれぬか? 一大事故、周りに知られぬよう密かにな」 三保野が命じると、お菜津は思わず懸念顔になって 「まさか……お方様は、命に関わるような、何か重い病を患ろうておいでなのですか!?」 と、身を乗り出すようにして伺った。 濃姫は思わず三保野と目を見合せ、クスクスッと小さな笑い声を立てた。 「安堵致せ、少なくとも私は死病は患ろうている訳ではありませぬ」 「でしたらいったい…」 「お菜津殿。姫様と我々が待ちに待った、ご慶事じゃ」 「ご慶事?」 お菜津は暫し当惑していたが、ややあってからハッと息を呑むように目を見開いて、濃姫の腹部を見据えた。 ようやくお菜津の顔にも、二人と同じ歓喜の笑みが浮かんだのであった。 「───おうおう、良い子じゃのう勘八は。暫く見ぬ内に、また一段と重とうなったのではないか?」 「そうやも知れませぬ。食が太き御子にございます故」 「それは何よりじゃ。儂の血筋をあまねく残す為には、子らは皆 健勝でなければ困るからのう」 その頃 信長は、数名の近習と共に熱田にある岡本良勝の屋敷に参上して、 まだ幼い三男・勘八を、白い菖蒲の花が咲き誇る庭先に出て、愛しげに抱きあやしていた。 穏やかな陽射しが降り注ぐ屋敷の縁側には、勘八の生母である坂氏が座して、 父と子の戯れを朗らかな面持ちで守っていた。 北伊勢の豪族・坂氏の息女である彼女は、濃姫や類に比べると容貌の麗しさは劣るものの、