「泣きたい時は我慢せず泣けばいいから。ちょっと待ってて。」 三津を部屋に押し込んで入江は少し席を外して冷した手拭いを持ってすぐに戻って来た。 両手で顔を覆って俯き加減で泣いている三津の前に屈むとその手拭いを衣紋の中に落とした。 「ひっ!?」 冷たさに驚いた三津は顔を上げて体を反らした。 それを見た入江はにんまり笑った。 「何これ手拭い?もぉ……ホンマに……。」 濡れた手拭いを自力で取り溜息をつきながらもそれを目に当てた。 「仕方ないです面白いんですから。お茶淹れてきます。ゆっくりしてて下さい。」 そう言い残して三津が止める間もなく入江は部屋を出て行ってしまった。 「すまないがお茶を淹れてもらえるか?それとサヤさんこっちの湯呑みは処分しといて欲しい。底が欠けてるようだ危ない。」 お茶の入ったままの湯呑みをサヤに手渡すとサヤは上に上げて下から覗くように底を確認した。【雄性禿】破解關於雄性禿脫髮的7大迷思 @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::    「ホンマや!申し訳ありません!お怪我は!?」 「三津さんが指を少し切ったが大した事はない。次は使える湯呑みを頼む。」 「申し訳ありません……すぐに。」 入江の視線を感じながらアヤメは震える手でお茶を淹れ直した。 それは三津を見る時の柔らかい視線とは違って冷たく鋭く感じられアヤメは下唇を噛みながらそれに耐えた。アヤメから盆を受け取った入江はありがとうと口にしたが目も合わさずに背を向けた。 部屋に戻ると三津はまだ手拭いを目に当てていたが障子の開く音に反応して手拭いを外した。 「おかえりなさい。」 三津は少し腫れた目で笑った。 「今回はちゃんとした湯呑みなんで口移しする必要なさそうです。」 「元から口移しする必要ないですから!」 「おや残念もう慣れちゃいましたか。もっと恥じらう顔見たかったんですけど。」 くすくす笑って湯呑みを差し出した。同じ手は通用しませんと三津も笑ってそれを受け取った。 お茶を飲んでようやく一息。 「三津さんと居ると退屈しないです。」 「からかい甲斐がありますもんね。」 「いえ?女性として魅力があるんです。」 そう言えば三津の顔はみるみる赤くなるじゃないか。 『なるほど,女性として扱うと照れるのか。今までそんな扱いされてなかったのか?』 新しい切り口を見出した入江はにやりと笑う。 「三津さんはとても魅力的ですよ?気立てはいい。可愛らしく笑う。芯があるのにか弱くて守りたくなる。」 目を見つめながらじわりじわりとにじり寄る。三津はいやいやと笑って誤魔化そうとしながら後退りをする。 「まだまだ良いところありますよ?」 三津の背後に壁があると分かっていてそのまま追い詰めにかかると, 「そ……外の空気が吸いたいなぁぁぁっ!!」 脱兎の如く逃げ出した。 「素早い。」 その身のこなしに感心しながら喉を鳴らして笑った。 「入江さんの意地悪っ!!」 悔しさを滲ませながら走っているとこちらに向かって歩いてくるアヤメの姿が見えた。 「あ!アヤメさん!お話しましょー!」 するとアヤメは踵を返してこちらも脱兎の如く逃げ出した。 「え!?待って!?」 滑りそうなぐらい綺麗な廊下を全力で走って追いかけるとアヤメが急に止まって振り返った。 「アヤメさん!お話!」 してもらえると思って笑みを浮かべた三津だったがアヤメは両手を突き出して三津の両肩をドンっと押した。 「お!?」 走って勢いがついていた三津は体勢を崩し尻餅をつくのを覚悟してぎゅっと目を瞑ったがその体はふわりと受け止められた。「い…入江さん……。」 三津が見上げるとふぅと息を吐く入江と目があった。 「あ……あの私……。」 アヤメの顔がみるみる青ざめていき入江と目があった瞬間に走り去ってしまった。 「あぁ……待ってぇ……。」 手を伸ばしてアヤメを引き止めたかったが三津の体は入江にふんわり拘束されたまま。 「ちょっと頭を冷やさせないと駄目ですね。」 「いえ!私が話をします!話がしたいんです!」 三津は入江に助けてもらったお礼をすると丁寧に突き放して急いでアヤメを追いかけた。 アヤメは台所へ駆け込んでわんわん泣き出した。何事?とサヤはその背中を擦ってやった。