BL関係ではありませんので」
そのとき、伊庭が断言した。
『まだBL関係ではない』
『まだ』、という一語が、頭と心のなかで反響しながらリピートされまくっている。
「よかったな、主計。まだがあるではないか」
「さよう。もっと積極的にすべきだ」
島田と蟻通が声をかけてくれた。
「主計、子宮環 そうだぞ。押しまくれ。押して押して押しまくって、さらには押し倒しまくってモノにしろ。おれみずから応援してやる。ありがたく思え」
さらには、副長が謎応援をしてくれた。
ってか、押しまくって押し倒しまくったら、ただのイタくてヤバいやつじゃないか。
しかも、めっちゃ上から目線だ。
いくら副長だからって、どれだけ上からなんだ?
ってか、おれだって誤解だっていいたい。
おれには、どうでもいいことだ。
だって、おれはBLではないんだから。
伊庭が人見と付き合うようになろうとBL関係になろうと、おれには関係のないことだ。
「またまた、強がりをいって」
「あきらめるな」
「落ち込むな」
「自分の気持ちに嘘をついたらダメだよ」
俊冬、島田、蟻通、俊春が、順番にいってきた。
「なんなら、おれみずからが人見さんを始末してもいいぞ。主計、そうすりゃ八郎はおまえ一人のものだ」
さらには、副長である。
いや、まって……。
そんなこと、めっちゃ韓流ドラマ的展開じゃないか。
「あ、だったら、勝太さんがわたしの影武者になるっていうのはどうでしょう?」
そのとき、伊庭がきらきら光る笑顔でそう提案してきた。
なんだか遊撃隊の、ってか人見と伊庭の闇のように濃く深い関係を垣間見たような気がする。
そんなおどろおどろしいやり取りを経て、ようやく打ち合わせをちゃんとおこない、それが終った。
マイ懐中時計は、丑三つ時を示している。
打ち合わせでは、俊冬と俊春が綿密に下調べし、手書きで記した地図をみつつ、マジでこの後の戦いについて話し合った。
それにしても、俊冬と俊春はさすがすぎる。
二股口だけにとどまらず、ちゃんと木古内方面までつぶさに見てきているのだ。
その時点で、二人の頭のなかで新政府軍との攻防の様子を思い浮かべていたのだろう。
木古内で戦うのは、遊撃隊だけではない。
大鳥率いる伝習隊や彰義隊や額兵隊など、逃げてきたり吸収したりといろんな隊がより集まって激戦を繰り広げる。
そこで散る兵の数はすくなくない。
そのすべてを救うことは無理である。
だが、一人でもおおくの兵を救いたい。
結局は、俊冬と俊春に頼るしかない。
おれには、たった一人すら護れないかもしれないからだ。それどころか、自分自身だって護れないかもしれない。
実に情けない話である。
つくづく思い知らされる。
夜も遅い。ってか、深夜である。
人見も伊庭も、今夜はお泊りである。
ひと眠りしてから、遊撃隊に戻るらしい。
というわけで、かれらと島田と蟻通は、副長の部屋で鼾をかいて眠っている。
狭くて場所がなくなってしまったこともあるが、寝そびれてしまった。
副長に話があるといわれた。
俊冬と俊春も同様である。
副長はどこかに去ろうとするかれらを呼びとめ、称名寺の境内にある井戸へと移動した。
井戸端だと、話し声が屋内にまで届くことはない。
「鉄のことだ」
おれたちを前にし、副長は開口一番そういった。
四人というのは、相棒も含まれている。
市村のことは、俊冬と俊春も了解済みである。
「おれから鉄に話しましょうか?」
俊冬が控えめに申しでた。
「いや。やはり、おれ自身が命じるべきであろう?」
「どうしても脱出させないといけないのですか?」
俊春のいまの問いで、かれもまた市村を遠くにやりたくないのだと察した。
によって遺品とやらを託した後、丹波にゆくよう命じるつもりだ」
「それは、おれたちもかんがえていました。なんでも、鉄は数年後に死ぬ可能性があるとか。文を添えて丹波にやれば、原田先生たちがうまくやってくれるでしょう。向こうにいるみなさんもおおよろこびされるはずです」
俊冬も、おれとおなじことをかんがえていたんだ。
「ああ、そうだな」
「鉄がいなくなると、銀も寂しくなりますよ」
俊春は、実は自分が寂しいくせして、つぎは田村のことをもちだしてきた。
うん。気持ちはわかるけどね。
「ただ日野にやるだけなら、そこは省いてもいいだろう。だが、副長の所持品を託さなければならないんだ。省くわけにはいかないだろう」
俊冬が俊春をたしなめると、俊春はシュンとした。
「わかっている。わかっているけど……」
「じつは、日野にゆくのは鉄だけじゃありません。安富先生が手紙、いえ、文を
「主計の案だが、
さらには、どう攻守すればいいかまでイメージできたはずだ。
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