島田はこの戦がおわったら、しばらくは謹慎生活を送ることになる。その後、京に赴いて剣術道場をひらいたり、レモネード屋や雑貨屋などをひらいたりする。

 

 まぁ、そのどれもが流行らなかったらしいけど。

 

 これらはウィキに記載されている情報ではあるが、なにゆえレモネード屋なのか?甘酒でも冷やし飴でもなく、なにゆえレモネード屋なのか、いつも不思議に思っていた。

 

 まるでアメリカの子どもたちが、お小遣い稼ぎに自宅のまえで売ったりするみたいだ。

 

 それは兎も角、かれはそういう経緯を経て、最終的には西本願寺の夜間警備員を勤めることになる。

 

 そして、そこで倒れて死んでしまう。

 

 西本願寺は、避孕丸 いっとき新撰組が屯所を構えていた。

 

 ゆえに、かれにとっては思い出の場所になるわけだ。

 

 そんな島田の将来は兎も角、かれの食にかける情熱と探求心には頭がさがる思いである。

 

 ちなみに、あとで俊冬に尋ねみた。

 

 人見と伊庭と蟻通のコーヒーには、砂糖とミルクをたっぷりいれて呑みやすいようにしたらしい。

 

 それだけでもコーヒーではなくなっている気がするが、島田のには砂糖とミルクを信じられないくらい大量に投入したとか。

 

 それこそ、砂糖を溶かすのにかなりの時間と労力を必要としたほどに。

 

 これもウィキに載っているが、島田は大の汁粉好きである。その好きさ度といったら、半端なかたらしい。自分で鍋いっぱいの汁粉をつくり、ぺろりと平らげたらしい。しかもその汁粉には、糸をひくほど大量に砂糖を入れていたとか。

 

 めっちゃ体に悪そうだ。

 

 そんな島田を横目に、おれもいただくことにした。

 

 まずはコーヒー。

 

 俊冬と俊春は、おれのにはなにも入れてくれていない。

 

 このまずさも、すっかり慣れてしまった。

 

 すくなくともいまこの時代で呑むにはなんら問題がないほど、このなんともいえぬ味わいに慣れてしまっている。の味覚って、えらいものだ。

 

 つくづく感心してしまう。

 

 つづいて、パウンドケーキを喰ってみた。

 

 ほどよい甘さだ。島田のように、卵のまったり感とやらはわからないが、甘さ控えめのこの洋菓子ならいくらでも喰えそうである。

 

 コーヒーにもよく合っている。

 

 ってか俊冬と俊春は、めっちゃ甘いパウンドケーキと甘さ控えめのパウンドケーキの二種類をつくったということか?

 

 さすがは俊冬と俊春である。

 

「うまいよ。どちらも最高だ」

 

 いつものごとく、自分たちは喰わない。ゆえに、いま二人は廊下に控えている。を向けていうと、二人は同時に笑顔になってうなずいた。

 

「ってか、また太りそうだ」

 

 それから、つぶやいてしまった。

 

 実際、太ったかどうかはわからない。心情的には太っていない。これだけ体を動かしているんだ。それに、さほど高カロリーなものを爆喰いしているわけでもない……

 

 たぶん、太っていないはずである。

 

 というよりかは、太りようがないというわけである。

 

「そういえば、副長はまた太ったんじゃないですかああああああああっ!」

 

 いいきらぬうちに、「兼定」の切っ先が鼻の頭を突いた。

 

 もちろん、いまの「兼定」は、相棒のことではない。

 

「てめぇっ、いまなんつった?」

「ひいいいいいいっ、な、な、なんにもいっていません」

 

 副長はおれの懐に入る手前で片膝をつき、「兼定」を神速で抜き放って突いてきたのである。

 

 ってか、シンプルにすごいじゃないか。副長に、これだけの技を発動させたおれも、すごくないか?

 

 しまった。いってから思いだした。

 

 副長に、「太った」発言は禁句だった。

 

 以前、近藤局長や永倉が「太ったんじゃないか」って指摘したことがあった。すると、副長はブチギレたのである。

 

 あのブチギレかたは、まるで近藤局長と永倉に一族郎党を皆殺しにでもされたかのようなキレかただった。

 

「ふ、副長。すみません。ちっとも思ってもいないことをいってしまいました」

 

 鼻先から、切先をどけていただきたい。

 

 それでなくっても、白人みたいにすらっと鼻筋の通っている高い鼻なのである。

 傷つきでもしようものなら、チャームポイントが一つ減ってしまう。

 

「この大噓つき野郎の鼻ぺちゃ野郎」

 

 刹那、切っ先が鼻をつんとついた。

 

「ぎやあああああっ!鼻が、鼻が、鼻が削がれたーーーーっ。ぽちたま、なにをやっているんだ?はやく、はやくおれを助けてくれ」

 

 おれが理不尽きわまりない暴力にさらされているというのに、俊冬と俊春は縁側から部屋に入ってきて、人見や伊庭にパウンドケーキの蘊蓄を語っている。

 

「大丈夫」

 

 俊冬がだけこちらに向け、謎断定した。

 

「だって、きみの鼻低いんだもの。削がれるほどのものじゃないよ」

 

 俊春もまたかっこかわいいをこちらに向け、世の無常きわまりないことをいいはなった。

 

 信じられん。

 

 きみらは、おれを護るはずではないのか?