「相棒、ほら、朝飯だ」

 

 お座りして睨みつけてくる相棒のまえに、ぶっかけ飯を置く。富士山のごとく盛られた飯のふもとに、ぐるーっときれいに沢庵が並んでいる。その量は、半端ない。

 

「おまえ、いつもこんなに沢庵のおまけがあるのか?そりゃぁ、俊春殿が好きになるよな?」

 

 相棒の、じとーっとした ・・・。

 

「あたおかすぎであろう、と申しておる」

「ひいいいいいっ!」

 

 右耳にささやかれ、飛び上がってしまう。

 

「ななっ!あたおか?」

 

 もちろん、ささやいてきたのは、相棒の代弁者俊春。

 

 あたおか?なんだっけ?

 

「頭がおかしい、と申しておる」

「はいいいいいいっ?」

 

 左耳に、俊冬のささやき。

 

「頭がおかしい?なんでです?」

「そもそも、兼定が弟のことを好きなのは、飯を供するという理由からだけではない」

「あ・・・。わかってます。でも・・・」

 

 俊冬の鋭い指摘。わかっちゃいるが、そんなささいなことで納得せねば、やるせなさすぎでしょう?

 

「兼定、副長のおかげで、今朝は大盤振る舞いだ」

「副長のおかげ?どういう意味なんです、俊春殿?」

 

「さぁ、朝餉の時間だ。掌を洗ってこい」

 

 俊冬も俊春も、胸元に膳を幾つも抱え、背にお櫃を背負っている。

 

 俊冬に促され、相棒にまたな、といってから掌を洗いにゆく。 部屋にゆくと、やけに静かである。

 

 副長を上座に、左右にわかれて永倉、島田、原田、斎藤が並んでいる。

 

 斎藤の横に座す。

 

 膳の上に並んだおかずが、神々しすぎる。

 

 双子は、みなが注目するなか、お櫃から茶碗に飯をよそっている。みな、おあずけを喰らった犬のごとく、辛抱強くまっている。

 

「ちょっ・・・」

 

 思わず、口からでてしまう。

 

『仏様にお供えするんじゃない。そんなに盛るな』

 

 昔、食事のとき、茶碗に飯をてんこ盛りにしてしまい、親父に叱られたことがある。

 

 双子は、そんなレベルなどとおの昔にすぎ、通天閣か東京タワーかってレベルもすぎ、ハルカスや都庁なみに盛りつづけている。

 

 ってか、よくもまあこれだけ器用に・・・。

 

 それを、原田と島田の膳の上におき、また盛りはじめる。

 

 みな、ビミョーな で、耐えている。

 

 さりげなくみると、副長の膳の上の飯は、フツー盛りである。

 

 おれのそれへと をうつす。

 

 香の物が、いつも沢庵は二枚ほどなのに、漬物皿からはみでるほど盛られている。

 

 そしてまた、飯を高層ビル盛りする双子。

 

 そそくさと、斎藤とおれの膳の上に置いてくれる。

 

 沈黙・・・。

 

 廊下をはさんだ向こう側から、おだやかな陽が射し込んでいる。双子のどちらかがやったのか、雀たちが飯をついばんでいる。

 

 シュッと、長火鉢の薬缶が音を立てる。

 

「悪かった」

「悪かったよ」

 

 副長と永倉が、同時に怒鳴る。二人とも、バツが悪いのか、は、あらぬ方向を向いている。

 

 原田、島田、斎藤の両肩が震えている。

 

 みると、永倉の膳の上に、おかずはのっているが飯はない。

 

「気のすむまで、罵倒してくれ」

「気のすむまで、殴れ」

 

 副長と永倉が、また怒鳴る。

 

「罵倒のほうが、よほどいい。頼むから、沢庵をくれ」

「殴られて、血まみれになるほうがいい。頼むから、飯をくれ」

 

 二人が、またまた怒鳴る。

 

 なんてこと・・・。

 

 そういえば、さっき、俊春が、EGFR肺癌 「沢庵の大盤振る舞いは、副長のおかげ」、と相棒にいっていた。そして、おれたちの沢庵も、大盤振る舞いである。

 

 副長の漬物皿はみえないが、沢庵がないってことか。

 

 そして、「 」の永倉は、飯がない。

 

 双子の傷だらけの に、いたずらっ子のような笑みが浮かぶ。

 

「われらは、いかなる暴力も好きではありませぬ。ましてや、ついてゆきたいと信じる主にたいして・・・。われらは犬ゆえ、恩ある主の