馬をつかうので、才輔も必要だな。あとは、久吉に鳶、か」  変わり者隊士の蟻通勘吾に、新撰組の旗役の尾関雅次郎。影は薄いが、副長が蝦夷で死んだ後、「兼定」の下げ緒を日野の佐藤家に届けた人物である。  この人選に、内心でほっとする。  名のあがった面子は、江戸にいくことになっている。 「隊士たちにはだまってろ。みな、いきたがる。それに、ほかにしられりゃことだ」 「承知」  こうして、メンバーはきまった。  とそこへ、榎本が小野を連れて戻ってきた。 「ここにいる全員。それから、島田に勘吾。雅次郎にもまた、幕臣で海の男である。数学者でもある。あの「咸臨丸」で航海長をつとめ、勝海舟とともにアメリカに渡ったことでも有名である。  そして、かれは親父と同郷。元笠間藩士である。  いや、もちろん、出身地がおなじというだけで、縁もゆかりもまったくない。  ウイキペディアに、アメリカで撮ったといわれるかれの写真が載っている。  古いモノクロ写真なので、どこにでもいるおのぼりさんって感じにみえるが、実際の小野は、いかにも理数系。物事を白か黒かでわけ、真面目で執着心が強そう。  讀懂家族信託01:什麼是信託 丸眼鏡をかけており、いかにも「リケダン」である。は、勝海舟よりも上で、五十歳くらいか。  ガチ文系のおれには、ちょっと苦手なタイプかも・・・。 「小野友五郎だ」  さすがは「リケダン」。かなりまともっぽい。  名乗ると、一人ひとりと握手をかわす。 「釜次郎から、話はきいているな?さっそく、打ち合わせに入らせていただく」  おおおっ、さすがすぎる。  いきなり、本題。  車座になった真ん中に、大坂城内の見取り図、運び出してからの輸送ルートを記した図をひろげる。  そのとき、双子が茶をもってきた。  腹をこわしそうな、茶菓子はない。らを暗殺し、王手をかけていたであろう」 「小野殿、あいかわらず手厳しいお方だ」  俊冬がいい、俊春ともども苦笑する。 「ですが、そうはならなかった」 「ああ。伊庭君のおぬしからの言伝で、上様は江戸へ帰還しだい、勝を召され、任せるであろう。さて、ときがない」  双子が、朝廷や薩長に味方していれば・・・。  これまで、考えたこともなかった。  二人は、いつの間にかいて、それがあたりまえのようになっているのだから。  副長と、があう。  きっと、副長もおなじ思いに違いない。  小野の「リケダン」力は、があう。  きっと、副長もおなじ思いに違いない。  小野の「リケダン」力は、 をも黙らせるなにかがある。  打ち合わせは、滞りなくすすみ、おわった。  双子は、敵の情勢を探りにでた。  そういえば、かれらの寝姿をみたことがない。  以前、「兼定御殿」で一夜を過ごしたときも、さきに落ちてしまったし、目覚めたときには朝餉の準備や薪割りをしていた。  そもそも、ゆっくりするなんてことあるんだろうか?  そんな馬鹿げたことやどうでもいいようなことを、考えてしまう。  副長のもと、今宵のメンバーが集まり、詳細に打ち合わせる。  安富と鳶が、「豊玉」と「宗匠」を連れてさきに城へゆき、城にいるほかの馬とともに、荷車につないで準備する。  荷車も馬も、小野が手配する。  夜陰に乗じ、おれたちは城に忍び込み、蔵からすべてを運びだし、荷車に積む。  それから、八軒家浜まで運び、そこから船で「富士山丸」へ。  おれたちの仕事は、八軒屋浜までの輸送。  現代では、天満橋駅のすぐちかくである。  タイミングは、今宵のみ。  明日には敵軍が到着し、城の受け渡しがおこなわれる。すくなくとも、史実ではそうなっている。  今宵を逃せば、運びだすことはできない。  幕府側の残留兵が火を放ち、燃えてしまうか、敵の掌に渡ってしまう。