「だからこそ、総司は連れて行けないんだ。五代目に何かあってはいけない。……分かってくれるな、総司」  暖かみのある声と共に、近藤は骨ばった手で沖田の手を包んだ。ここまで言われたら、頷かざるを得ない。 「……わかり、ました。ですが、理心流はお預かりするだけにさせて下さい。私は、まだまだ近藤先生から教わらないといけないことが有るのです」  沖田はそう言うなり頭を下げた。そして立ち上がると、部屋を出て行く。"五代目に何かあってはいけない"と云う何気ない言葉が魚の骨のようにつっかえて仕方がない。  部屋を出て廊下を少し歩いたところで立ち止まった。そして屈むと口元を抑えて静かに咳をする。それは中々治まらなかった。 「総司……」  沖田の後を追おうとする近藤の腕を土方は掴み、首を横に振った。 「総司も突然のことで驚いてんだろう。一人にしてやれ。それより今後について詰めねえと」  近藤は小さく頷くと座り直す。そしてキリリと顔を引き締めた。 「歳……お前の察しの通り、俺は今回の同行は命懸けで行くつもりだ。二度と帰らぬことがあれば、新撰組はお前が引っ張って行ってくれ」  そんなこと、簡単に言ってくれるなと言いたくなるのを土方はグッと堪える。そして、分かったと小さな声で答えた。  yaz避孕藥その時、一つの疑問が浮かぶ。 「勇さんよ。長州へ入ったところで右も左も分からねえのに、そう上手く情報が取れるもんなのか?」  それを聞くなり、伊東がスッと手を上げた。 「それについては から説明を差し上げましょう。時に土方君。此度の長州訊問使に、幕府は を随行させようとしているのは知っておりますか?」  淵上とは禁門の変にて殉死した真木和泉の門弟であり、赤禰とは長州の軍隊である奇兵隊の元総督である。どちらも捕まり、京の六角獄舎に繋がれていた。 「ああ、聞いたぜ。奴らをわざと保釈して恩を着せ、間者に仕立てあげようって話だろう?」  随分とざっくりとしているが、概ね合っていると伊東は笑みを浮かべる。 「そこで、我ら新撰組としても石津を保釈し、連れていこうと思うのですよ」  石津とは長州藩士であり、三月ほど前に捕縛し、屯所にある牢へ入れていたのだ。 「成程。新撰組の駒も必要って訳か。悪かねェな」 「有難う。貴殿にそう言われると嬉しいですよ」  伊東の真っ直ぐな目で見られると、土方はいつも分が悪い気持ちになる。ふいと視線を逸らした。  土方は、伊東とは江戸の帰りで少しは和解したつもりではいる。少なくとも不仲説が隊士の中で流れない程度には。だが、どうしても を取り払うことは出来なかった。  何故なら、伊東はここ最近、勤皇派の志士たちと繋がりを持とうと動いていると監察方から報告があったのだ。特に薩摩と接触を試みているとのことであり、これについて問い正せば、この時勢において食わず知らずは取り残されるだけだとか、敵を知らずに戦うことは出来ないだとか返された。  近藤が長州へ赴き、敵を知りたいなどと言い出したのは間違いなく伊東の影響だろう。伊東から言い出せば土方は却下と一蹴するが、近藤が言えば断れないことを知っていたのだ。やはり食えぬ男だと渋い顔をする。  だが、近藤もアホではない。些か真っ直ぐで人を信じすぎるだけだ。機転は誰よりも利くし、人の懐に入るのが上手い。いざとなれば大将として伊東を諌めるだろうと土方は信じることにした。