「…して、どういった方とお会いになられたんじゃ。 同郷の方か、それとも肥後、久留米か」 志真はただ淡々と口を開いた。 そこには好奇心の類いは一切無く、純粋に主人の身を案じたものである。 「いや、そういった者ではのうて普通……の男でね。僕の新しい友じゃ」 「そうですか…。吉田様の頬が緩まれちょったけぇ、私はてっきり女が出来たのかと」 志真はさらっとそう言ってのけ、それを聞いて吉田は笑った。 「まさか。女やらいる筈がない。僕は色恋にゃあ興味が無いけぇ」 「そうですか。そりゃとんだ御無礼を申しました」 志真は自分の勘が外れたことを内心残念に思いながら、深々と頭を下げる。 botox眉心 「それよりも与三郎…。近々君に重要な任務を頼むと思うが心しちょいてくれ」 「御意」 確実に急所を…ということは、今まで斬ったのは一人や二人じゃねえよな」 「まあ、そうでしょうね。ああ、故に勘当されてしまったのかも知れませんよ」 沖田は納得したといった風に手を叩く。 「もしも近江のお尋ね者だとしたら、人相書きが出回っているだろうしなァ。取り敢えず様子見と行こうや。今の新撰組には選り好み出来るほど人員に余裕が無え」 近藤は唸りながらそう言った。 「承知しました。…しかし副長は不服なようですねェ。そんなに心配ならば、白岩君は私が見ますよ」 沖田は目を細め、微笑む。土方は顎に手を当て、思考を巡らせると頷いた。 「そりゃあ、良いな。総司なら安心だ、頼んだぜ」 沖田は部屋から出ると空を仰いだ。 「私が見ます、だなんて言ってしまいましたが… さて、どうしましょうね…」 視線の先には白い雲が緩やかに流れている。 その脳裏には先程の土方が浮かんだ。 近頃土方はことある事に疑うようになっていた。立場上致し方ないとは思うが、別人になったようで寂しさを覚える。 自然と溜め息が漏れた。 沖田は縁側に座ると背を丸め、膝に両肘を付け、手に顎を乗せる。 其所へ背後から人影が現れた。 「あれ、総司。どうかしたの、溜め息だなんてサ。悩み事なら、この平ちゃんにお任せだよ~」 藤堂は歯を見せて笑うと沖田の横にをかいて座る。 「平助。いえね、悩み事なんていう大層な物では無いんですよ。有難う御座います」 そう返答すると、藤堂はつまらなさそうに唇を尖らせた。 「何だ、面白くないなァ。そうだ、総司って今日非番だよね。だったら甘味でも食べに行こうよ」 藤堂は満面の笑みを浮かべて沖田の顔を覗き込む。 沖田は驚いて反射的に背を反らすが、直ぐに体勢を戻すなり苦笑した。だが、何処か楽し気である。 何時でも変わらない藤堂のような存在は貴重で沖田の心を癒した。 沖田も立ち上がると、大きく背伸びをする。 「…本当に平助は子供ですねェ。良いですよ、付き合ってあげます。行きましょう」 悪戯をした子供のように笑いながら悪態を吐くと、沖田はさっさと歩き出した。 「ひっどい言われようだなァ!まあ、良いや。総司、俺ね。亀屋陸奥に行きたい!」 亀屋陸奥とは、本願寺御用達の和菓子屋であり、中でも松風なる菓子が有名である。 「はいはい。それでは其処に行きましょうか」