"───滝音はこの大会前、副島が引いた組合せのくじを見て、大会をシミュレーションしてみた。
 初戦の遠江姉妹社が課題だ。ほぼ初めての実践となる。その後にあたる高校には、慣れればおそらく勝てる。
  親子活動 が、準決勝の滋賀学院、そして決勝の遠江には負ける可能性の方が高い。どれだけ俺らが野球経験値を上げられるかだが、それは読みにくい。

「わたしはまだみんなの実力を知らない。でも、滝音くんがそう分析するのなら間違いないと思う。じゃあ、わたしはとりあえず遠江姉妹社の徹底的な分析に注力するわね」

「ああ、頼む」

 ならば、俺もやっておくことがある。
 ひとつ、罠を仕掛けておく。
 滋賀学院や遠江はしっかりと分析をしてくるだろう。俺が打たずとも準々決勝まで何とかなるのであれば、滋賀学院とあたるまで、しっかりとした弱点を見せてやる。甘い罠を。

 こうして、誰にも気づかせずに滝音はここまでの四試合で、あることを徹底していた。
『真ん中と内角へのスライダーは全て凡退する』
 そんな甘い罠だった。"