2024年06月

「そういうことだね。日本は日清・日露戦争で列強の仲間入りをしたが、天狗になってはいけないということだよ」 「国際情勢は、身近な人間関係と変わりませんね」 「ああ。しかもこうした情勢は、私の仕事にも少なからず影響する」 「そうかもしれませんね」車は上野方面に進み、浅草へ入って行った。 「それが牛鍋の店だよ」 原は、店を指差した。 明治の頃に創業したその店は非常に繁盛している様子で、引き戸からひっきりなしに客が出てきた。 「ここの牛肉は、最高だよ。さて、ひゐろさん行こう」 二人は店の中に入り、早速牛鍋を注文した。 「原さん、一つお伺いしたいことがございます」 「どのようなことだね?」 【頭皮濕疹】如何治療頭皮濕疹及遺傳性的永久脫髮? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::「絵葉書については、どういう印象をお持ちですか?」 「……絵葉書?ずいぶん唐突だね」 牛肉やねぎや春菊、割下などが二人のもとに届いた。 「鍋は焦げやすいからくれぐれも注意してくれ。適宜割下を入れて、食べるんだよ」 原はひゐろに、そう忠告した。 再びひゐろが口を開いた。 「絵葉書を露店でお見かけすることは、ございませんか?」 原は、牛肉を口に運びながら語った。 「もちろんあるよ。年賀状の交換も当たり前のように行われている。今や老若男女に人気だね」 絵葉書は年賀状のような郵便物として役割を果たすだけでなく、写真で時事の出来事を知らせる役割も果たしていた。当時は、グラフ誌がなかったからである。 「商売としてやっていくことについては、どう思われますか?」 「君が商売としてやっていくのかね?」 「絵葉書は人気のようなので……商売として良いのかなと思いまして」 ひゐろも、牛肉を口に運んだ。 「大きな事業にはならないかもしれないが、商売のいろはを学ぶには良いかもしれないね」 「そうですね。ありがとうございます」確かに絵葉書をきっかけに、商売を学ぶという考え方もあるなとひゐろは思った。 「まぁ、どんな商売も時流を読むことは重要なことさ。それを念頭に置いておくといい」 原はそう言って牛肉をつまんで、黙々と食した。 昼食をすませると、すぐに銀座の口入れ屋に戻った。 この日は原以外の客が入らなかったため、ひゐろは十七時に帰宅した。 翌朝、斎藤がを剃りながら、ひゐろに声をかけた。 「今日、仕事は休みだろう?いっしょに日本橋あたりの露店を歩かないか?絵葉書の市場を知りたい」 「ええ。久しぶりに日本橋を歩きたいわ。寒いですし、露店で何か食べましょう」 ひゐろはうれしそうにを塗り、化粧をし始めた。 この日、二人の身に思わぬことが起きた。十六時を過ぎた頃、ひゐろと斎藤は本所吾妻橋駅まで歩いた。 二月という時節柄、気温は低いものの、快晴であった。 「先日、さんの『近代の恋愛観』という本を買いました。その本は関東日日新聞での連載が、書籍化されたものです。まだ読んでいる最中だけれど、とてもおもしろいわ」 「あぁ……ちゃぶ台の上にあったね。僕もおもしろそうな本だなと思って、めくってみたよ」 「気がついていたのね。実はあの本に、心に残った一節があったのです」 「へえ、どんな?」 「『人生は、欲求の連続だ。言い換えれば、生きるということが全て何者かを求めることである。その求めるところが、異性であるか、真理であるか、浄土であるか、神であるか、知識であるか、黄金であるか、名誉であるか問うところではない。等しく皆、そのものに対する熱愛が根底にある。愛していないものを求めるということは、不可能であるからだ』と。そんなことが書かれてありました」

求められるままに、求めるままに。

これは快楽なのか、興味なのか。それとも淋しさなのか。愛なのか。

世の中の人は、その違いを認識しているの?

認識した上で、性の営みがあるの?恋愛があるの?

 

曖昧なまま、関係を続けている人もきっといるはず。

 

―――恋愛は神秘的で、ひらめくものだ。

―――心と身体ともに結ばれ、それが個人と個人の間に生まれることは恋愛のほかにない。性的にも霊的にも、自我を満足させるのは恋愛のみ可能だ(『近代の恋愛観』)。

 

「ひらめき」と、「自我を満足させること」。

そこからはじめても、いいじゃない。

ひゐろは斎藤に抱かれながら、そう思った。【雄性禿】破解關於雄性禿脫髮的7大迷思 @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::

 

こうして二人は、心ゆくまで求め合った。その日から斎藤は、のひゐろの自宅で暮らすようになった。

斎藤は人目をるのか、ほとんど外出をすることがない。

読書をしたり、ひゐろの代わりに家事をして、時間を潰した。

 

ひゐろが休みの日には、二人はただただ愛欲の時を過ごした。

激しく求め合い、快楽をる。

ひゐろは、女であることの悦びを覚えた。

 

斎藤から恋愛を匂わせる言葉は何一つ語られなかったけれど、ひゐろは満ち足りていた。

 

―――警察からの追手を恐れるがゆえ、私の身体にと快楽を求めているのだろうか。

 

時折、ひゐろはそう思うことがあった。

ひゐろも孟で埋められなかった何かを、斎藤に求めているだけかもしれない。

そう思うと、自分の気持ちにも確信が持てずにいた。

 

二月になった。二人で朝食を食べていた時のことだ。

 

「今日の関東日日新聞を見たかい?」

斎藤は、ひゐろにたずねた。

 

「いいえ。何か重大なことが書いてありましたか」

 

斎藤は関東日日新聞を、ひゐろに手渡した。

 

「一面に、が亡くなった記事がある。先月は、も亡くなった。近代国家を形成した人々が、次々と去っていく。時代は確実に、移り変わっている」そう言うと、斎藤は黙々と飯をかき込んだ。

 

「まさか山縣有朋さんが!昨年の十一月にはされました。おそらく、転換期を迎えているのでしょうね」

ひゐろも斉藤に同意した。

 

……今日は久しぶりに、大学へ行ってみたい。兄の車を返した後、出かけてみるよ」

と斎藤が切り出した。

 

「そう。私もそろそろ仕事へ行く時間だから、支度をしたら出かけるわ」

ひゐろは茶碗の上にを置き、食器を持って立ち上がった。

 

「玄関に、合鍵を置いておくわね」

 

ひゐろは化粧をし、仕事へ行く身支度をはじめた。

そして出かける前に玄関に斎藤を呼び、ひゐろから熱く熱く口づけをした。

どうか、私の唇や舌を忘れないようにと。

 

……必ずここに帰ってきてね」

斎藤は黙って、ひゐろの顔を見つめた。

 

「それでは、行ってきます」

ひゐろは、玄関の扉を閉めた。

 

―――どうか、私の唇や舌を忘れないように。

身体を通して念じている。

そして自らの身体を通して、斎藤を満たしたいと思っている。

 

目を閉じて、ひゐろは斎藤のの感触を浮かべた。

私の肌を刺す、あの雄々しさ。

やはり、斎藤を愛してしまったのだろうかと。

 

駅へ向かう道には、雪が積もっていた。その日のひゐろは、十八時に帰宅した。

鍵は閉まったままで、灯りもついていなかった。

とりあえず、何か暖かいものをつくろうと思い立ち、土間へ向かった。

 

土鍋に昆布を入れ、煮立たせる。

そこに豆腐を入れながら、ひゐろは思った。

あの時、「出かけないで」と言うべきだったのではと。

 

行動を制限するつもりはないが、斎藤が警察に捕まってしまうことが何よりも怖かった。

斎藤はいつもひゐろの前に突然現れ、

「生糸や綿花をアメリカに輸出することから、人生が変わってきた。だからここが私の想い出の地だよ」 と初老の男は話した。 「輸出に使われた船は、きっと大きなものですね!たくさんの夢を、載せていたんでしょう」 「でもね、当時はそれが上手くいくなんて、少しも思っていなかったよ」 「君はまだ若いから、これからのことだと思うがね。いろいろと挑戦するが良い。『〈職業婦人〉といって女性を調子に乗らせると、家族関係は破綻する』というもいるがね。そんなことはないと思うよ。女性が経済的にも夫を支える立場になったら、万が一の時にも家庭は安泰じゃないか」 ひゐろは、納得する。 「オートガールも、立派な職業ですか?」2 T恤系列推薦、韓系穿搭 | MLB Korea 香港 「それはそうだよ。人の話を聞いたり、君の話をしたりすることで、お互い気持ちが晴れる。立派な接客業だと思うよ」 横浜港が見える洋食店で、ひゐろと初老の男は食事をする。 ひゐろはこの時、初めてコロッケを食べた。「なんておいしい料理でしょう!じゃがいもを使った揚げ物なのですね。初めていただきました。ごちそうさまでした」 「満足いただけたようで、安心しました」 大きな船が港を出ていくのを、ひゐろと初老の男の二人で見ている。 「私の取引や生活に関係のない方に、話を聞いてもらいたかったんだ。そのほうが利害関係もなく安心だし、気分転換になると思ったのでね。今日は、どうもありがとう。とても楽しかったよ」 「お役に立てて良かったです」 ひゐろは、頭を下げる。 「それじゃ、銀座の口入れ屋まで送るよ」 と初老の男は言い、ひゐろを乗せ、銀座に向けて車を走らせた。帰り際、口入れ屋の事務員から「明日は十二時に、ここへ来てくれ」と言われる。 ひゐろは約束通り、十二時に銀座のオートガールの口入れ屋に顔を出した。 口入れ屋ではオートガールが三人おり、座っておしゃべりをしていた。 三人とも、色鮮やかなを着ていた。 薔薇や牡丹、菊の大胆な柄に紫や赤、黄などの派手な色合いがひゐろ目を惹く。 やはり銀座に集まる女性たちは、お洒落だわとひゐろは思う。 その一人と目が合い、ひゐろは声をかけられる。 「……最近、入った人?」 「はい。昨日入ったばかりの新人です」 「世の中は不景気だけど、この世界は大忙しよ。後腐れがなく、手軽にうっぷんを晴らしたい殿方が多いんでしょうね」 ひゐろは彼女の言った〈手軽に〉という言葉が、ひどく気に障った。 職業婦人の仲間入りをしたと思ったものの、所詮安っぽい女だと思われているのだろうかと。 「あなたは新人だから、知らないでしょうけど……。オートガールも相手から気に入られると固定客がつき、指名になっていくわ。指名になると報酬も上がっていくから、覚えておくと良いわよ」「……そうなんですね!ぜひ指名されたいです。そのようになるためには一体、どうしたらよいのでしょうか?」 ひゐろは、その秘訣を知りたいと思った。 「それがわかったら、苦労はしないわよ。自分で考えることね。まずは外見や会話、殿方へのサービスを工夫することよ。それがオートガールの心得」 「……」 ひゐろは再度、三人の着物やお化粧などを見た。 鮮やかな着物の色合いと、艶やかな面持ち。 なるほど、これがオートガールの心得の一つねと感じた。 あとは何が必要かは、自分で模索するしかないなと思った。 「それから、一つご忠告。お客様から名前を聞かれることがあっても、決して本名を明かさないこと。あとで、厄介なことにならないようにね。通称をつくっておくと良いわ」 「確かにそうですね。考えておきます」 ひゐろは、お辞儀をしてお礼を言った。

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