入江と二人で門の側に立っているのを見つけて急いで門まで続く石段を駆け下りた。桂達に気付いた二人はゆっくり手を振った。 「ありがとう。お陰で助かった。」 三津の両頬を包み込んで額をつけた。既に冷えてしまった頬を手で温めようとした。 「お礼なら九一さんに。九一さんが元周様に捕まれば長くなるからとこの作戦を。」 三津は巧くいって良かったと微笑んだ。 「私は付き合わされてる俊輔が可哀想で。さぁ帰りましょうか。ここに長居はしたくないんで。」 入江は三津に手を貸して馬に跨らせた。それから当たり前のように自分も跨った。桂はその様子をじっと見ていた。【改善脫髮】針對脫髮原因 選對脫髮改善方法! @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 :: 『元周様は何処でお気付きになったのか。私が来る前に何かあったか。 鋭いお方だ。二人の雰囲気で察したのかもしれん。』 その夜桂は阿弥陀寺に泊まった。布団の上に胡座をかいて元周をどう対処しようか頭を悩ませた。 『別に悩む必要はないか。悪者は私だ。嘘でも九一から奪ったと言っておけばいい。』 悪者になるのが自分の役割なのに何を意地を張ってるんだろう。自然と溜息が漏れた。 「今日もお疲れ様です。もう休みましょ?」 その姿を心配した三津が寄り添った。 「ありがとう,大丈夫だよ。三津の方が疲れただろう。あんな所に連れて行かれて。」 「面白い藩主様ですね。共に働く人達は大変そうですけど。」 三津は今日の出来事を思い返してふふっと笑った。 「大変だよ。でもあの方一人に根を上げていてはやっていけないよ。曲者は他にも大勢いるからね。」 手強い奴があちこちに居ると項垂れた。三津は項垂れた桂の肩を抱いた。そうだ,こうして疲れたこの人を癒やすのが役目なんだ。こうやって役に立つのを喜んでいた頃の自分を思い出しつつある。 「もう寝ましょう。また手を握りますか?」 「三津がいいならそうしたい。」 『ホンマにして欲しい事主張せんくなったな。』 桂の疲れきった笑顔に胸が締め付けられた。本当に自分を二の次にしている。関係修復の為とは言え,自分を押し殺し過ぎて壊れてしまったら元も子もないのに。 「ホンマにして欲しい事言っていいですよ?」 そう言ってみるも桂は無言で首を横に振る。 「ゆっくり進みたい。三津が進める時に進む。」 そう言って布団に潜って手を差し出した。三津は少し考えてから桂の布団に入った。 「無理しなくていいよ?」 「いえ,少しずつ以前を思い出してるんです。今までしてもらった事を思い返してあの時の気持ちも思い出してるんです。 小五郎さんと二人暮らしを始めた頃は同じ家に帰って来てくれはるのが嬉しかった。隣りで小五郎さんが眠ってるのが嬉しかった。それすらも……当たり前になると何とも思わなくなってしまうんですね。」 三津は桂の胸に顔を埋めた。この匂いも温もりも全部自分のモノだと思えた時の幸せを思い出そうとしていた。 「あれはいい思い出だ。もう思い出として置いてていいんだよ?これからの私を見て少しずつでも好きになってもらえるように努力する。」 桂は優しく抱き留めた。こうして三津からこっちに飛び込んで来てくれるだけでも進歩だ。 「今日自分から松子と名乗ってようやく妻としての実感が湧いた気がします。」 三津はやっぱり松子は違和感だらけで可笑しいと思い出し笑いをした。 『そうか。妻としての実感が湧いたから歩み寄ろうと思ってくれたのか。』 このまま順調に行けばまた好きと言ってくれるだろうか。少し希望を持った。でも驕ってはいけない。慎重に行かなければ。 「白無垢姿はさぞ綺麗だろうな。」 「汚さんようにせなアカンってそこにばかり気が行くやろうからそんな物着せても勿体無いですよ。」 それに改まった儀式は苦手だからある意味この形の婚姻で良かったと三津は笑った。 「女子は白無垢に袖を通したいと思うものだとばかり思ってた。やっぱり三津は違うね。」 「あ,もしかして呆れてます?それなら私は前に言っていた温泉を巡る旅に行きたいですね。」 「そうだ。そうしよう。もう少し落ち着いたら二人で行こう。」 そこで子作りでも出来たらと考えて鼻の下を伸ばしたところで三津に額を叩かれた。