「そうだね。僕のストレスの大半は、やっぱり仕事かな。特に多趣味なわけじゃないから、ストレスの解消法がいまいちよくわからなくて」「それ、わかる!何か夢中になれるような趣味があればいいんだけど、そう簡単には見つからないんだよね」そこからは、なぜか互いに無趣味だという話で盛り上がってしまった。前回ここで会ったときよりも、今回の方が話が弾む。それはきっと、自分でも気付かない内に私が彼に心を開き始めていたからなのだろう。custom packaging manufacturers、同僚とも違う。私と彼の関係は、きっと言葉ではうまく説明出来ない。「七瀬さんは、何か趣味とかあるのかな」「依織はインドアだから、マンガとかゲームかな。あとドラマ鑑賞」依織は昔から少女マンガを読むのが大好きで、マンガの話を振ったら永遠に話していられるくらいハマっている。好きなマンガのことを、ジェスチャーを交えて楽しそうに私に話してくれる。いつもそんな依織が可愛くて、愛しくて、たまらなかった。「へぇ、そうなんだ。もっと七瀬さんのこと、君に教えてもらおうかな」「私に聞くより、本人に直接聞いた方がいいと思うけど」「僕も本当はそうしたいんだけど、最近全く会えてないんだ。連絡しても、毎回忙しいって言われて会うのは断られるよ」依織は予定がびっしり入るのが嫌な子だから、毎回忙しいなんてことはないと思う。そもそも残業がほとんどない職種なのだから、夜は比較的空いているはずだ。それでも断るということは、ただ単に久我さんと二人で会いたくないのだろう。それか、意識してしまうから敢えて会わないようにしているか。何となく依織は、後者のような気がした。「君は毎日七瀬さんに職場で会えていいね」「羨ましいでしょ?好きな人に職場で会えるなんて、最高よ」依織に会えない毎日なんて、今の私には考えられない。依織を好きになったあの日から、私の隣にはいつも依織がいた。
社会人になってからは、ほぼ毎日顔を合わせている。ただ顔を見れるだけで、声を聞けるだけで、幸せだと思っていた。「ねぇ、久我さんって今まで何人の女と付き合ってきたの?」「唐突な質問だね」「だって、女慣れしてそうだから。依織も、多分その辺は気になってると思う」このルックスで人当たりの良い態度は、普通の女性にとっては魅力的に映るのだろう。もし彼がうちの職場にいたら、間違いなく職員からの人気ナンバー1に上り詰めているに違いない。なぜこの年齢まで独身なのか不思議なくらいだ。「じゃあ、僕が話したら君も話す?」「私はそんなに経験多くないから。男とヤっても、気持ち良いと思ったことないしね」「それは、案外男の方に問題があったのかもしれないよ」私はおでんを食べる手を止め、隣に立つ久我さんを見つめた。「何言って……」「君を満足させることが出来なかった男が悪いって、思ったことはないんだ?」「……」セックスしても、毎回感じるのは苦痛と虚無感ばかりだった。心が満たされたことなど、一度もない。相手を変えても、結局思うことは、『あぁ、やっぱりこんなもんか』何も感じない自分がおかしいのだと思っていた。相手を責めたことなんて、今まで一度でもあっただろうか。「問題があるのは……私の方だと思ってた。だって、今まで私、男の人にドキドキしたことないし……」「それは、今まで出会ってきた男に魅力がなかっただけかもしれない。……まぁ、推測だけどね」この人の言葉は、なぜか私の心を軽くしてくれる。前回ここで会ったときもそうだった。
誰にも言えなかった私の気持ちを、一切否定することなく肯定してくれた。この人だけが、理解してくれた。「……ちょっと、話はぐらかさないでくれる?いつの間にか、私の話になってるんだけど」「あぁ、バレたか」彼は悪びれることなくニヤリと不敵な笑みを見せた。