"  つまり積極的にイベントに関わる人間の集まりになるため、皆大体この程度には気さくに話す。

他の仕事も確認して報告すると言うレイシーと別れ、俺とネカは仕事の終了を告げに生徒会室へと向かう。
 債券基金 階へと続く階段の途中で、雑談は突然その話題となった。

「そういえばさー」
「うん?」
「明日のゲスト、誰だか知ってるー?」

楽しげに言うネカに、素直に知らないと告げる。
実技披露会は学園外からの観覧も歓迎している催しだ。
父兄なんかも時間が取れれば来るし、近所の住民も入って来れる。
そしてその自由回覧とは違い、学園側が招待する「ゲスト」が、最低1人以上存在した。
俺は実は当日、ゲストへのお茶出しをする係になっていたりもする. 

このゲストは例年大体ギルド暁の誰か――…ギルド長か二つ名持ち、またはその両方となっている。
優秀な生徒は引き抜きもあると噂だが、真偽のほどは不明、らしい。
シロとジャンと言う実例が居るので、事実である可能性は高いと俺は踏んでいる。

「なんか聞いたのか?」
「うん。ギルドマスターとヴァーゼン・クグル・ランが来るんだってー」

エートかよ。

内心でツッコミ。

どうせなら見たことがない二つ名持ちを見たかった気もするが、実力者が増えると俺の擬態がバレる可能性も増える。
それを考えれば、ある意味良かったのかもしれない。
ミュゼが来るだけでも、クラス対抗は気を付けないといけないし。

「お前それ、誰から聞いたんだ?」
「盗み聞きー」
「誰の会話を?」
「がくえんちょと、ミーナせんせ」

また、難易度の高い盗み聞きを。

それ以前に盗み聞きしたことを堂々と言っていいのかという話だが、ネカなら問題ない。
もし咎められたところで俺に害はないし、「天才」ネカには立派な大義名分があるからだ。

「てことは、出来たのか?集音魔法」
「まだー。保濕面霜 でも「音波の到達点」って名前にした」

大義名分とは、まさにこれ。
ネカは、「新魔法作成」の、天才なのだ。

夏前から作っていたと言う集音魔法の話は1年Aクラスと実行委員内では周知の事実で、その実験中に「盗み聞き」してしまっても何の不思議もない。
この魔法が完成すれば、荒野や森で獣や魔物を探す際にかなり役立つだろう、と、その手の研究機関では期待されているそうだ。
ただ今のままだと、盗み聞きに使い放題の気もするが。"