2019年01月

「………いや、知らん。………でもリンゴ病は妊婦が罹ったら大変だぞ。」「そうなのか?まぁ、だったら伝えといて良かったな。気をつけろよ。」隆行は、そう言うと、「………あぁ。」保濕精華と返すGに手を挙げ、歩き始めた。しかし、隆行は、「あ。そういえば。」そう言って、もう一度戻ってくると、「G。リンゴ病って初期症状とかどうなんだ?城下の他の人達の事を考えても、対処した方が良いからな。」とGに質問をしてきた。(…リンゴ病か………。)考え込むGは、(たしか、俺が罹った時に、親父が言ってたな…。ええっと…。)幼い頃の事を思い出した。「………たしか………微熱とか気分が悪いとか風邪っぽい症状だったはずだ。」「そうか。で、妊婦が罹るとどう大変なんだ?」「………流産とか死産の可能性が上がる。」「マジか?!」「………あぁ。」

「読んでくれ!」たっつんが顔葉にそう言うと、頷いた顔葉が荒々しい手つきで書状を開いて読み始めた。---健夫殿。久しいな。毛烈と王一枝の事は聞き及んでいるかと存ずる。官億嘉國際產品に捕らえられた微王(王直)を取り戻すため、二人に協力したが、相手は網を張って待っておった。つまるところ、官軍の狙いは、捕らえた微王(王直)を餌に、我らを誘き出す事にあったようじゃ。ゆえに、官軍の誘いに乗らず、双嶼で牙を磨いたヌシの選択は正しいじゃろう。じゃが、毛烈、王一枝亡き今、官軍は、そちを見過ごさぬじゃろう。ヌシは微王(王直)の養子の中で、唯一微王(王直)の威光を使わずに勢力を築いた。その手腕で、官軍と戦えるまでに大きくなる事を願う。当面、ワシは、残党を率い福建で官軍の目を引きつけておる。その間に、双嶼を興隆させよ。今も苦境に立たされている海の民のため、場所は違えども共に奮闘しよう。---書状はそこで終わっていた。

(問題は…金兵衛の方だ…。)この頃、野球部教祖である細井金兵衛の様子がおかしくなっていたのである。(飯を残すような奴じゃなかったはずだし、意識がある時は五月蝿いくらいだったのになぁ…沙田馬場)ちょうど、新年が明けた辺りから、金兵衛が暗くなっている事が多いのである。敏感にそれを察した隼人は、それとなく、金兵衛に優しく接するようにしていたが、いまいち原因が分からない。そして、新年の行事である野球大会の時には、藤吉郎もそれに気づいたようで「殿…。金兵衛の様子がおかしいような…。」と言っていた程である。思い過ごしの可能性は低いであろう。だが、未だ、金兵衛が自ら隼人に相談をしてきた訳ではない。隼人と藤吉郎は、金兵衛の変化に気づかないフリをしているが、(相談しないって事は、自分で考えてるんだろうなぁ。まぁ、金兵衛も、もう思春期だからな…。)暗くなっている金兵衛を、心配していた。身体の熱気が冷めるまで、そうして休んでいた隼人は、「さて…。」と言って立ち上がると、(そろそろ帰らねぇと、藤吉郎が色々うるせぇだろうからな。)と、愛馬ナリタブライアンに跨り、獅子ヶ城へ戻って行った。

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