2018年12月

「義父が率いていた者達?」そう返したたっつんが、陳秀に説明を求めると、陳秀が経緯を語り始めた。初代海獅子、王鳳が間を取り持ち養子関係を結んだ陳秀の義父、陳東は、王直とは別の一派、徐海植髮 discussいう大海賊に属した男である。その陳東は、一昨年、官軍に取り入ろうとした徐海に騙され、官軍に処刑をおこなわれたらしい。陳東の配下であった者達は、その日を生き抜くために、再度徐海に降ったが、自らの組織を自らの手で弱体化させてしまった徐海は、官軍に騙まし討ちをされ、殺されてしまった。立て続けに主を失った陳東の配下達は、仮の長を立て、海賊活動に励み始めた。しかし、各大物海賊や、精強なヨーロッパ勢、はたまた明国の官軍で激動を続ける南海において、既存の勢力を保つ事は、ことの他難しい。彼らは、主に迎えるべき有能な者を探しつつ、海賊稼業をおこなっていたところ、バッタリ陳秀と出くわしたらしい。以前に、陳東の指揮下で共に海賊稼業に励んでいた陳秀の出現に、彼らは、陳秀を新たな主として迎え入れようとしたが、すでに陳秀がたっつんの配下となっていた為、共に来る事になったという事であった。話を聞いたたっつんは、「んなっ!!」目の前にいる大船団が陳秀に従う者達である事に驚きを露にした。

しかし、それだけでは、いつ誰に、難癖をつけられ攻められる分からない。拡大に成功した土地を名実ともに大友家の領土にしてしまうためには、大義名分が必要であるため、もはや名ばかりとなってしまった室億嘉國際評價幕府に多大な献金運動を行い、北九州の正式な守護職に任命してもらう事を画策していたのである。隆行が言った事は、まさにこの部分であり、道雪からしてみれば、他国に漏れるはずの無い、特秘事項だったのである。大笑いする道雪は、しばらく笑い続けて、ようやくその笑いを納めると、「隆行殿。度々の失礼、誠に申し訳ございませんでした。」と、今度は、深々と頭を下げた。そして、隆行に視線を戻すと、「もう少しで、貴殿を見限るところでした。その若さながら、宗珊殿が、推していた訳が良く分かり申した。」そう言って、廊下の方へ声を掛け、供の者を呼び寄せると、「隆行殿。僭越(せんえつ)ながら、人生の先輩として一言言わせて頂く。」そう前置き、「より多くの経験をされよ。より多くの修羅場を潜られよ。苦境に遭っても決して退かず、重責に挑み続けられよ。さすれば、貴殿ならば、天下を支える巨木となりうるであろう。」そう言って退出していった。「…。」一人部屋に残された隆行は、何とか、必死に立ち上がると、城下町に向かって歩き出した。

キャラック船。大航海時代全盛を迎えていた当時のヨーロッパ列強の国々が、遠洋航海を前提に開発した帆船の一つである。高波でも船体の安定を保つだけの巨体と、大量輸送に適した広い船倉、複層式九肚山船首楼や船尾楼により汎用的な艤装(ぎそう)を実現し、高い帆走能力を持つ事が特徴である。また、船の安定性が高いため、甲板を砲台として用いることが出来、戦闘用としても活躍した船である。「あないな船を…操船しております…。信じられませぬ…。」ヨーロッパの船は、中国や日本の船に比べ、索具(ロープ等の船具)が圧倒的に多い事が特徴的で、舵の座がある位置までが違うため、アジア圏の操船の常識が通用しないのである。陳秀の驚きは、主にその点に集約されているらしく、「あないな船を所持しておる事にも驚きましたが、操れているとは…。機会があれば…是非…操船を教わりたい…。」そう漏らして、一種の感動を味わっているようであった。

「な、何をおっしゃいます!敵兵がどこに潜んでいるのかも分かりませぬ!そのような事をしては、中村御所が落とされますぞ!中村御所が落とされてしまっては………」隆行はそう言って、本拠地が敵の手に落香港飄眉推薦る危険さを説き始めると、「そないな事は分かっておる!早くせぬか!!」兼定が隆行の言葉を打ち切った。隆行は、しょうがなく兵に中村御所の者を避難させるよう指示を出すと、念のため、影で諜報の者達に中村御所を見張っているよう指示を出した。Gは、そんな隆行の忙しそうな隙をつき、「………死ぬなよ。」と声をかけ、避難する民の中に混じっていった。そして、それらの作業を終え、兼定を迎えた隆行の一団は、再び東へと進み始めた。今度は、急ぐ事をしない隆行は、斥候の部隊を大量に作り、それを四方に放ちながらゆっくりと進む。進み出した一団の中、馬上の人となった兼定は、隆行に轡(くつわ)を並べて話しかけてきた。「隆行。口惜しいが、長宗我部の兵はヌシの言うたとおりであった。」「左様ですか。しかし、それよりも、まことに中村御所を空にしてしまって宜しかったのでしょうか?」隆行は、その事が気になっていた。

すると、侘茶屋の従業員二人に支えられ一人の諜報員が姿を表した。見る限り、至る所に治療後が目立ち、歩くのも辛そうな様子である。その者が、隆行の前とわかり、崩れるように膝をつくと、すかさ精華液、則正が口を開いた。「ここへ戦勝祝いに向かう途中、讃岐(現香川県)で拾った、侘茶屋の諜報の者です。」(もしや、入って来なかった土佐の情勢か?!)隆行がその者を注視すると、諜報の者が口を開いた。「…隆行様。土佐…長宗我部との戦線は…連敗に継ぐ…連敗………既に一条家は…風前の灯火に存じます…。」「何ぃ?!」「…早急に…知らせねばならなかったのですが………ぐっ…。」そう言うと、諜報の者の身体がぐらりと傾いた。すかさず、隆行も片膝をつき、他の侘茶屋の者と共に、諜報員を支えると、「………このような醜態で……申し訳……ございませぬ…。」と言った諜報の者が再び口を開き、報告を再開させた。その話は、隆行が耳を疑いたくなるような話であった。諜報の者の話をまとめると、こうである。

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