2018年10月

「なぁ、隆行。」たっつんは、屋敷の中に通され、囲炉裏の脇に座らされると、隆行の方を向き、そう語りかけた。「何だ?」隆行は、家臣達にたっつんの夕飯も用意するよう伝えると、同じく激光收毛孔炉裏の脇に座りたっつんに答える。「実はな…」たっつんは、今の己の意中を隆行に余すところなく語り始めた。夕飯が運ばれても、箸もつけないたっつんは、又爺の事や自分に足りないモノの事、そしてこれからの事などを長々と語った。話を聞く隆行は、うん。うん。と、口を挟む事なくたっつんの話に耳を傾ける。「…ってことで、明に行きたいんだけど、何か、良い手があったら教えてくれ。多少、危険でも構わん。」「そういう事か…。」たっつんの長い話を聞ききった隆行であるが、いつの時代も、そうそううまい話など転がっていない。「たっつん。」隆行は、たっつんの方を向くと、「何か、よくわからんけど、しっかりとした覚悟がある事は良く分かった。」そう言って立ちあがった。「ちょっと飯食って待っててくれ。」隆行は、そう残し部屋を出て、しばらくすると、大きな箱を重そうに抱えて戻ってきた。

と、音頭をとり、「六甲おろし~に~颯爽~と~」と歌いだした。そうして、歌いながら、無気力な民達の間を歩き出し、「このお経され唱えられれば、極楽へ行ける。」歌のpitera間にそう言って誘うと、少しづつ民達が立ち上がり始めた。そして、「そない、うまい話なんぞあるものか…。」「じゃが、騙されたところで、ワシらに失うもんは何もありゃぁせん…。」「嘘じゃろうが…今よりはマシじゃろう…。」と、次々に立ち上がると、隼人に続き、一つ集団が出来上がった。『蒼天翔ける~日輪の~』その集団は、徐々に従う人が増え、次第に歌声も大きくなっていく。(よし、これなら、行ける。)隼人は、それら民達を引き連れたまま、足を北へ向けた。そして、通る村々でも、同じように人を増やしていくと、集団はみるみるうちに肥大化し、1000人を超す大集団へと変わっていく。『闘志溌剌~起つや~今~』こうして、梅雨時の佐渡中北部には、大量の貧民が集結した一つの異様な流れが出来あがった。

「じゃぁ、あのお菊さんの親父さんは、どんな感じなんだ?」「………俺らを結ばせたがっとる。」(そういうとこは、感じとるのか。)感心するたっつんは、(よし!なら、さっさとartandeducation備して、結婚させちまおう!これじゃ、いつまでも此処におらんといかん。)たっつんは、煮え切らないGを見限ると、立ち上がってパンパンと尻を叩いて草を落とした。「よし。分かった。じゃぁ、結婚式の準備しとくから、お菊さんにちゃんと言っとけよ。」その言葉に、Gがガバッとたっつんを見上げる。「実は、隆行からも頼まれてんだわ。少しくらい男らしさ出して、プロポーズくらいしとけよ。」驚いているGは、このまま此処にいたら、たっつんを止めようとしかねない。たっつんは、Gが動き出す前に、町の方へ向かい歩きはじめると、「じゃぁな!ちゃんと言っとけよ!!」そう言って、走り出した。(さぁて、忙しくなるぞ!なんせ、何にもやり方知らねぇからな!)たっつんは、そんな事を考ると、Gの方を振り向かずに、秋の風に向かっていった。

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