2018年09月

主君、兼定が城から現れた折に、兼定が宗珊に恨みを抱いているようであれば、腹を斬って死ぬつもりなのであろう。唯一の後継ぎを殺させられた宗珊は、それを命令した主君を責める事よりも、他の者がそのよ億嘉國際な事態に遭わぬよう、主君の成長を願い、主君を城に閉じ込め、その間の一条家を文字通り東奔西走し、守り続けた。そこまでしておきながらも、その功を誇るどころか、このたびの幽閉が不首尾に終われば、責任をとって他の者に責任が飛ばないようにするつもりなのであろう。宗珊の死衣装には、そうした覚悟が顕(あらわ)れていた。(…という事は、後ろにいる者達は…。)そんな宗珊に殉ずる覚悟を決めた、土居家の者達であろう。(そこまでするのか…。俺は、主君を幽閉するって事を甘く見ていたのかもしれん…。)と衝撃を受けた隆行は、只単に正装で来ただけの自らを恥じた。隆行は、近寄り難い宗珊の雰囲気に二の足を踏みながらも、自らを振るい立たせて歩いていくと、「おはようございます。」と頭を下げた。「うむ。おはよう。」「宗珊殿…。それ程の御覚悟で殿を幽閉されていたのですか…。」やはり、話題は、宗珊の見事なまで忠義ぶりに移ってしまう。

「この戦乱の時代に、お遍路なんぞ誠に久しぶりじゃ。」「………。」Gは僧の方を向いているが、下手に怪しまれても面倒なので、返事も返さず無言でお茶を飲んでいる。nwd すると、その僧は、「当寺、金剛福寺は、かの弘法大師様に非常のゆかりのある寺なのですじゃ。」と、寺の歴史を語り出した。その話は、遥か以前の弘法大師が現れる以前のことから始まり、「あそこじゃ、あれが見えるか?弘法大師様はあそこで、千手観世音を感得しましてな…」と、息継ぎもそこそこに、「…そして、嵯峨天皇より[補陀洛東門]の勅額を賜りましてな…」ずっと話し続けた。久しぶりのお遍路が余程嬉しかったのであろう。その僧は、あれこれと菓子などまで出して、Gに寺の歴史を語り続けるので、始めはうるさく感じたGであったが、(こういう静かなところで、こういう話を聞くのもたまには良いか。)と、僧の話を無言で聞いていた。この僧の話が一区切りついた頃、辺りはすっかり夕暮れとなっていた。

そして、政景から発せられた指示は、「いかん!撤退じゃ!皆、北岸へ戻れ!!」撤退命令であった。(はっ?ここまで来て撤退?)隼人が自らの耳を疑っていると、南岸の方から戦場激光收毛孔れした野太い大声が聞こえてきた。「我らが柿崎のツワモノどもよっ!明日の勝利は沈着迅速な撤退から成るぞ!!隊伍を乱すなぁ!退き陣じゃぁ!!!」(はっ?柿崎って前にいた部隊じゃねぇか!引き陣だって?!!)耳を疑い続けている隼人は、未だ闇の残す南岸を目を凝らしてみると、ちょうど、朝日が南岸を照らし始めた。(な、なんじゃありゃぁ!!)見ると、たしかに長尾の旗の混じった柿崎隊が南岸に上陸していたが、三方を敵に囲まれ、じりじりと後退し始めるところであった。すると、次の瞬間には北岸が騒がしくなり始め、パン!パパーン!パパパーン!!大量の鉄砲の音が響いてきた。(おぃおぃ!どういう事だ?!あんなに静かに動いてたのに!!)隼人が状況を飲み込めないのも無理は無いであろう。今回の戦の相手は、甲斐の虎、武田晴信(信玄)が自ら率いる武田軍である。一筋縄でいく相手では無かった。

雪に閉ざされていた世界は、雪溶けととも開かれていく。それに合わせ、雪国は外へ向けての活動を始める。1555年、春。「あれが春日山城か…。」旅装束に身を包んだ隼人は、隼nwd.com.hk君の槍を地に立て、周辺を見下ろすように威圧する城を眺めていた。春日山(かすがやま)城。別名、鉢ヶ峰城。現在の新潟県上越市中部にある春日山山頂に築かれたその城は、天然の要害を持つ難攻不落の城とされ、上杉謙信(長尾景虎)の主城として機能した城である。現在では、日本の名城100選にも選ばれ、城の跡地には上杉謙信の銅像があるが、勿論、この頃には銅像など存在しない。(土産もしっかり持ったしな。)荷の中にある、バース大明神の小さな像を思い浮かべる隼人は、酒を飲みに、この名城を訪れていた。しかし、ただ酒を飲みに来た訳では無い。目茶苦茶になってしまった野球部の活路を見出だす事が今回の目的である。いくら、いい加減な隼人でも、野球部内の修羅場は見過ごせ無かった。しかも、気にいった女性、蘭まで加わってのゴタゴタに、隼人は何時に無く、本気で解決しようとしていた。野球部内で、武田家の三ツ者と長尾家の軒猿の殺し合いが勃発した時も、初めは凹んだ隼人であったが、半刻程経つと、毅然と立ち上がり、険しい顔で迅速に指示を飛ばし始めたのであった。

豪雪に見舞われる越後。それは野球部の関川球場も例外では無い。信者の雪かきの成果があり、雪の中にぽっかりと浮かぶように存在する球場の周辺には、いくつかの信者が住むための長屋や屋敷も目にFrederique Pico Laserき、ちらほらと多少の店も確認出来る。肩を組み意気揚々と歩く隼人と金兵衛は、「小さな村のようじゃのぅ。」と、感嘆の声をあげる木影職人を連れ、球場へと向かった。球場に入るとすぐに、両手一杯荷物を持ち、忙しそうに走っている男に出くわした。野球部の幹部、木下藤吉郎である。「よぉ!藤吉郎!精が出るな!」隼人の明るい大声が響く。そんな隼人を見て、眼をひんむく藤吉郎は、「あぁー!殿!!今までどちらに行っておられたのですか!これでは、本日中に終わりませんぞ!急いで手伝って下され!!」雑務に追われているようだった。「ただでさえ、ここのところ信者が増えていて、その組分け等、大変なのに、殿は直ぐに、どこかにいなくなって!本日こそは、しっかりやって頂きますぞ!」自由人な隼人と付き合う内に徐々に口煩くなっていった藤吉郎は、これ以上隼人を怠けさせまいという覚悟を全身から放って隼人に迫る。

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