その後もこんな感じでヨミは生徒を当て続け、自分は一切解説せずに授業を終わらせた。今はいい。今はいいとして、それでいいのか、教師ヨミ。戦闘術実践学については、戦略や連携、戦うための避孕藥迷思得等の授業なので、あんまり習うことなさそう、というのが本音。実践は2年になってからなので、1年間はこれでもかと言うほど理詰めだ。机上の空論を地で行くらしい。最後は魔法生物学。本日2度目のヨミの授業だ。つい1時間前の授業が記憶に新しいため、クラスのほぼ全員が指される準備に身構えた。さっきは簡単な魔法基礎学だったから良かったが、魔法生物学では知ってることばかりとは限らない。指されて「わかりません」なんて誰だって出来れば言いたくないので、皆必死だ。――――…が。大きな鉄製の鳥籠を持って教室に入ってきたヨミは、魔法基礎学とは別人だった。と言うよりも、もはや「あんた誰」と言ったほうが適切かもしれない。「魔生物学はそのまま、魔物の生態についての授業だ。教科書にはメジャーな魔物が載ってるから、後で読むといい。ああ、今は開かなくていい。ノートも要らない。その代わり、全員前に注目してくれ」この指示の仕方からして、もう普段のヨミとはどこか違う。教科書の通りやれば楽ではあるはずなのに、見向きもしない。怠そうな素振りは欠片もなく、目も輝いているし、座ってもいない。担当教師になるだけあって、ヨミはこの「魔生物学」が好きなんだろう。とても。思わず、軽く笑ってしまった。なんて素直な大人だ。面倒なものは面倒、好きなものは好きと、見事に態度に表れている。裏表がない、とでも言おうか。別に計算が出来ないわけではない。打算的な思考もあるにはあるだろう。それでも、基本的には自分を取り繕い偽る気がない。いい生き方だ、と思う。周りは些か大変かもしれないが。俺たちの注目を集めたヨミは、無言で鳥籠に掛かっていた覆いを取り去る。天井が緩いアーチを描く、目の荒い鉄格子の中に居たのは、鳥ではなく。「ヤーチャーだ」ヨミがソレの名前を告げる。わぁっ、と、言葉にならない声でクラス中が騒めいた。ソレは、体は小さな猿に似ていた。猿の割には耳が猫っぽく三角で、目も細い。そして手首から腕の付け根に掛けて、薄い膜のようなものが胴体と繋がっており、その膜にびっしりとトカゲのような鱗が生えていた。