「この戦乱の時代に、お遍路なんぞ誠に久しぶりじゃ。」「………。」Gは僧の方を向いているが、下手に怪しまれても面倒なので、返事も返さず無言でお茶を飲んでいる。nwd すると、その僧は、「当寺、金剛福寺は、かの弘法大師様に非常のゆかりのある寺なのですじゃ。」と、寺の歴史を語り出した。その話は、遥か以前の弘法大師が現れる以前のことから始まり、「あそこじゃ、あれが見えるか?弘法大師様はあそこで、千手観世音を感得しましてな…」と、息継ぎもそこそこに、「…そして、嵯峨天皇より[補陀洛東門]の勅額を賜りましてな…」ずっと話し続けた。久しぶりのお遍路が余程嬉しかったのであろう。その僧は、あれこれと菓子などまで出して、Gに寺の歴史を語り続けるので、始めはうるさく感じたGであったが、(こういう静かなところで、こういう話を聞くのもたまには良いか。)と、僧の話を無言で聞いていた。この僧の話が一区切りついた頃、辺りはすっかり夕暮れとなっていた。