チチチチチチ少し肌寒くなり始めた朝霧を、鳥の囀りが震わせている。1554年、秋。今年も収穫の時期を迎え、町には栗や秋刀魚などの秋の味覚が並ぶ時期となった。しかし、ここadrian cheng土佐中村では、今年も、その収穫を祝う事は無い。平素と全く変わらぬ町は相変わらずで、それは、毎朝恒例の矢を射る隆行も同じであった。スターンスターン以前よりも、小気味よい音が続くようになっている。(今年で殿の謹慎も二年になったか…。)矢を放つ隆行は、最近めっきり話さなくなった、主君一条兼定の事を考えていた。しかし、話さなくなったといっても、隆行が話しかけても返事が無い、という訳では無い。宗珊との話し合いで、主君に食事を持って行く時は、話をしてはいけない事となっている。食事を持っていくのは、余程の特別な事が無い限り、隆行か宗珊が運んでいたため、話さないというルールは未だ破られていなかった。つまり、(殿は、もう二年もの間、誰とも会話をしていない。)そういう事であった。