「そうですよ。負けたことをただ悔やんでいるのではなく、自分の行動を悔しいと思えるあなたはまた一歩、成長してるんです」
沖田が市村の頭を撫でた。
「沖田隊長…」
「さ!他の皆さんもそうです!あなた達は強い!なんたって新撰組にいるんですから!
今回の負けがなんですか。たかが一度負けただけ!何も落ち込むことはないんです。今回負けたなら私達は次勝てばいい。それだけの話です」
隊士達はチラリと沖田を見た。
「あなた達は自分が思っているよりも遥かに強いですよ?それは、新撰組一番隊隊長沖田総司が保証します」
「沖田隊長……」
「私は胸を張って言えますよ。うち(新撰組)の隊士は強いと」
「俺もだ」
斉藤が頷いた。
「お…沖田隊長!斉藤隊長~!!」
隊士は立ち上がり、二人に群がった。
身動きがとれず、苦笑いな二人だが、なんだか嬉しそうだった。
あまりに群がったため、隊士達は原田を踏んだ。
「ぐぇ!?なんだ!?」
原田は目を開けた。
目の前で沖田と斉藤が埋もれている。
「……ん?なんだなんだ?」
永倉もあまりの騒動に目を覚ました。
「美海。何があったんだ?」
ふふふ。と美海は笑った。
「なんだなんだなんだぁ?おめぇら元気が有り余ってるじゃねぇかぁ!」
「わぁ!原田隊長!」
原田も乱入し、再び場が沸き上がった。
元気な新撰組が戻ってきた。
美海は終始ニコニコしていた。
「土方さん!佐川さん!」
土方は佐川と城内を歩いていた。今後の作戦と今回の反省をしていた所だ。
「えーっと…」
後ろから声を掛けられ、土方は悩んだ。
誰だ?誰だっけ?
目の前には色白で洋服が似合う男がニコニコと立っている。
「はっ!申し遅れました!僕は新任歩兵頭の松平太郎と申します。お二人のお話はお聞きしました!伏見で大活躍されたと」
あぁ。あの。
土方達に声を掛けたのは、松平だった。
なんとなく話は聞いていたためわかった。土方も興味があったのだ。
旗本生まれで早くから蘭学に興味を持っていたかな。珍しい。
「そちらの立花さんにはお会いしました。素直で良い方ですね」
【生髮】鋸棕櫚可養髮?功效、副作用一覽! @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 :: 土方は苦笑いした。
素直で良い奴じゃねぇよ。
「松平さんは蘭学をされると聞きましたが、彼も医学を学んでいるんですよ」
「へぇ!そうなんですか」
松平は歓喜の声を上げた。
「そういや松平さん。あんた洋式訓練も受けていたようだが、銃の方は詳しいかい?」
佐川が聞いた。
「あ!はい!一応そういう所についてるんで」
佐川と土方は目を合わせた。頷いた。
そして鳥羽伏見での薩摩の戦法を詳しく話した。
「……なるほど」
「もはやこっちのなんざ役に立たねぇ。なんたってこっちが1発撃つごとにあっちは10やら20撃ってくるんだぜ」
「ケタがちがうんです」
土方が頷いた。
「連発式の元込銃がこれからの主流になりそうですねぇ…」
松平は呟いた。
「私達もあれに切り替えましょう」
「会津もあれが欲しい」
「僕もそれは良い考えだと思います!直ぐに調達させましょう!」
松平は喜んだ。
それに佐川も土方も思わず笑みを洩らす。
「銃の説明書みたいなのありませんか?」
土方が聞いた。
「俺も見たい」
「あ!歩兵心得ならありますが」
松平は胸ポケットを探った。中から紙を出す。
『歩兵心得』
なにやら異国語がたくさん使われていたが、なんとなく理解できた。
二人がそれを読み耽っていると松平が口を開いた。
「あ。そういえば、土方さんと佐川さんに伝えてくれと言われたのですが、12日の早朝4時天保山岸壁集合で新撰組は富士山丸に、会津は順動丸に乗って江戸へ向かうとのことです」
「まだ戦うのですね?」
土方は目を輝かせた。
「さぁ?お偉さんは自分らも逃がして貰えるとか言ってましたが…」
「ちっ…。とんだグズだな」
佐川が舌打ちをする。
「まぁまぁ」
松平が宥めた。
土方はこんなに静かな時を過ご
土方はこんなに静かな時を過ごせたのは何年ぶりかと思った。
「あのぅ…」
「なんだ?」
声を上げたのは美海だ。
きっといつかは知ることになる。
伝えなきゃならない。
「実は…」
「なんだ?はっきりしろ」
美海の言いたいことがなんとなく分かった沖田は、気まずそうに下を向いている。
「実は…将軍は逃げました…」
土方は目を見開いた。
「そんな冗談いくらなんでも面白くないぞ」
「歳、本当だ」
近藤が力なく言った。【頭皮濕疹】如何治療頭皮濕疹及遺傳性的永久脫髮? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::
「嘘だ」
それなら自分は、新撰組は、死んでいった仲間は、林は何のために戦ったというのだ。
「土方さん。正確には、将軍と容保公です」
沖田は土方の目をまっすぐ見る。
「松平さんも…?」
「私達を見切ったんです」
「………そんな馬鹿な」
土方は呆然としている。
主人がいない今、行く宛を失ってしまった。それでも戦争は続く。
会津という飼い主に買われていた新撰組は捨て犬になってしまった。
実は、会津藩主の松平以外にも、桑名藩主も逃げている。
固まる土方を美海、沖田、近藤、松本は見守る。
「そんな……。近藤さん」
「ん?」
近藤は優しく聞き返す。
「あんたはどうしたい?今や俺らは戦う必要は無いんだ。捨てられたんだからな」
土方は呟いた。
「俺は…」
近藤の答えを皆黙って待つ。
新撰組ってここからどうなるんだっけ?
美海は詳しく知らない。
近藤は口を開いた。
「俺は、賊軍と言われようが何と言われようが最後まで戦いたい。将軍様のために、戦いたい」
「俺らを捨てた奴のために?」
「俺は将軍様や松平さんには恩がある。
他が逃げようと裏切ろうと、俺は最後まで、将軍様をお守りしたい。例え、もうお逃げになったとしても」
沖田は微笑んでいた。
近藤らしい答えだ。
「そっか…。わかった」
土方もなんとなくこの答えを予想していたのだろう。
「近藤さんが言うなら、俺らは、新撰組は。最後まで将軍につこう。例え最後の一人になっても、皆が敵になっても、裏切らない」
近藤は頷いた。
土方は沖田と美海も見る。
二人も頷いた。
「よし。こうなりゃとことんやってやろう!
賊軍だぁ?んなもん次で錦旗奪い返してやるよ!」
そう叫ぶと土方は立ち上がった。
何を思ったか、部屋を出ていった。
「沈んだかと思えば元気になって…。忙しい人ですね」
美海は苦笑いした。
「まぁとりあえずよかったです。無事で」
沖田の言葉に皆が頷いた。
「伏見の話聞きたかったなぁ」
松本が言った。
松本は妙に戦国大名のような所がある。
基本、戦いを好んでいる。医者としては珍しい。
「今それを聞くのは傷口に塩をえぐり込むようなもんですよ」
沖田は笑った。
「歳、傷つきやすいところあるからな…。歳が俺の顔に泥を塗ったなんてとんでもねぇ。俺はいつも歳のおかげで『近藤勇』でいられるからな」
美海は近藤の言った意味がなんとなく理解できた。
本当にお互い信頼しあってるんだろうなぁ。
「俺には本気で謝っていたが、奴はまだ負ける気はしてないだろ」
「当たり前ですよ。近藤さんと私が復活して美海さんも増えれば負けるわけがない」
沖田はニッと笑った。
「これは早く復活してもらわなければなりませんね!」
「だな」
「それはそうと…。永倉さん達、元気でしょうか?」
美海は窓を見る。
一先ず負けはしたが、戦争は終わった。
またすぐに始まってしまうのだろうか。
「見に行きます?」
「顔見がてら手当てでもしますか!」
美海は立ち上がった。
「大丈夫大丈夫」
「大丈夫大丈夫」
何が大丈夫なんだよ…。
美海はぐいぐいと沖田に引っ張られる。
バフッ!
「きゃっ!」
美海は布団の上で沖田に押し倒された。
手を抑えられて上にまたがれている。
ニヤリと笑う沖田に再び顔を赤くした。【雄性禿】破解關於雄性禿脫髮的7大迷思 @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::
次の日も新撰組は帰ってこなかった。
相変わらず普通の朝だが、あっちではまだ戦争は続いているのだろう。
近藤、沖田の治療。眠れない夜。そんな風に過ごして、更に数日が経った。
戦争が始まって3日後。
意外な人が帰ってきた。
美海は近藤の様子を見に行った後、大阪城の長い廊下を歩いていた。
一度近藤、土方に着いて二条城に行ったことはあるが、それに比べ物にならないくらい大きい。
「あ。君、確か新撰組の人だよね?」
声を掛けてきた相手はジロジロと髪を見てきた。
なるほど。
髪色で判断してるわけね。
便利だ。
「あ。はい」
「えっと確か…。黄金の蜂の…」
男は顎に手を置いた。
「立花です」
「そうそう。立花さん」
なんだろう。
「君んとこの山崎って人、さっき運ばれてきたよ」
「えぇ!?」
美海は大声を上げた。
周りの道行く人が驚いたように見てくるため、軽く会釈した。
「ま、まぁ、とりあえず、あそこの部屋に運ばれたみたいだから」
その男は近くの部屋を指差した。
「ご親切にありがとうございます!」
美海は大きく頭を下げた。
「いいよ」
「あの、失礼なければお名前を…」
「松平太郎」
松平はにっこりと笑うと手を挙げて行った。
今さらだが、色白のとても優しそうな人だった。年は美海の少し上ぐらいだろう。
松平さんか。
それより山崎さん!
美海は血相を変えて走った。
開けたらどうかケロッとした山崎さんがいますように!
美海はきつく目を瞑った。
ガラッ
勢い良く襖を開ける。
「山崎さん!?」
「よ…よぅ。美海ちゃんやん…」
「山崎さん!!」
床には美海が思ったよりも重症の山崎がいた。
美海は涙を浮かべながら近づいた。
「美…海ちゃん…そんな急いで、沖田さんから…乗り替…える?」
そんな苦しそうに冗談を言う山崎に美海はいつものように怒鳴ることはできなかった。
山崎は布団の中から手を伸ばす。
美海は握った。
「つっ!」
それだけでも山崎は顔を歪ませる。
「す!すいません!」
「い…いから。握っ…てて」
美海は頷くと、そのまま座った。
「いったいどうしたんですか!?」
美海は今にも泣きそうだ。
そんな美海の目に溜まっている涙を山崎は指で拭った。
「ちょっと…撃たれた…。弾が5、6発入ってる」
美海は声にならない悲鳴を上げた。
「あっちは凄…いよ。銃弾の雨が…降っとる。土方…さんには、会え…なかったんやけど、多分元気や…ろ」
「そうですか」
美海は必死に頷く。
どうしたらいいんだろう。
「本間、監察の俺がこ…んな撃たれて…どないな話やって感じや…な。監察失格や」
「そんなことありません!!」
美海は山崎が今までどれ程隊のことを思って働いてきたか、身をもって知っている。
「美…海ちゃん…を、あ…んな地獄に連れ…ていか…んくて、本間に良かっ…た」
喋る度に傷口から血が溢れる。
どうしたらいいの!?
動けない。
「寝ますよ」
沖田はにっこり笑って言うと、手を放して横で眠りだした。
心臓に悪い!
逆に美海は眠れなくなった。
その直ぐ後、大阪からも見えるぐらいの炎が伏見で上がっていたことに美海は気付かなかった。